振り返って

今年はコロナで歴史に残る一年になった。多方面に悪影響が及び、触れ合うことで成り立っている茶道界も散々である。家元の初釜が規模を縮小して行われると聞いたときは、すこしほっとした気持ちになった。しかし参加予定であった先生方の相次ぐキャンセルなどの諸事情で中止になってしまった。全く暗くなる話ばかりで残念でならない。

30年来のお付き合いのある先生が今年古稀を迎えられた。どうしてもお茶事をしたい気持ちが強かったが、コロナ禍で伸び伸びになってしまわれた。お茶人として古稀は大きな節目、12月になって漸く決断された。細心の注意をはらってお茶事が行われたのは言うまでもない。懐石はお蕎麦であり時間も短かった。道具立ては古稀に相応しい茶道歴を感じられた。正客を務めた私に二服目のお薄を勧められたが、そのお茶碗に感動した。10代でお茶の道に入り、10代で生まれて初めて買い求めた茶道具。右も左も分からない時に買った茶碗が手元に残されていることが驚きであり、自分の茶道人生を語るのに提供された逸品。これぞ茶道と胸が一杯になった。

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