「何もありませんが、庭の熊谷草を見に来てください」とお茶事に誘われた。名前は袋状の花を源平合戦で有名な熊谷直実の母衣に見立てて名付けられたと言われる。人目を惹く優雅な姿形のために、乱獲と盗掘により自生地が激減してしまい、絶滅危惧種に指定されている。腰掛の横に咲いていた熊谷草。気品があり凛としている姿に思わず顔がほころぶ。連客の皆さんとも話が弾むというものだろう。ご亭主は土壌と日陰作りが上手くいけば地下茎で増えていきますとおっしゃるが易しくはないようだ。熊谷草茶会に毎年呼んでくださるようにお願いしたのは言うまでもない。